竹と釣り 時空を超えて楽しさをシェアする

江戸時代の釣り道具は世界最高水準でした。

平和な時代に軍民転用が起きたのです。釣竿には弓と矢の加工技術が使われました。さまざまな竹材をまっすぐに伸ばして竿にする

技術は、弓矢のそれとまったく同じだったのです。釣り竿を丈夫で美しいものにするには漆ですが、これも日本刀の鞘を漆で固める技術からきています。錘も鉛の鉄砲玉からの転用です。ヨーロッパでは竹がないので木製の釣り竿でした。英国の修道女ジュリアナ

バーナーズによる 釣魚論 (1496年)が世界最古の釣りの本とされていますが、そこにある釣り竿のつくり方を見ると、大変苦労しています。手元の部分を軽くするため、焼いた鉄棒を木の枝の内部に貫徹させて抜いている。これでも腕の延長に過ぎず、日本の竹竿のような感度 振動の増幅作用は望めなかったはずです。

 

 ちなみに秋田では、葉を剥がしながら成長させ固くしまったヨシに漆を塗って川釣り用の釣り竿にしました。竹の分布の北限なので

ヨシを代用しました。

 和竿とは、天然の竹を主な材料とした釣り竿のことですが、竿に漆を塗ってあるのが特徴です。 真円上で節目が詰まっているのが

いい竹ですが 100本のうち10本あるかどうか。竹は11月から切り出し、青田家のまま火であぶって脂を抜いて、3月3日のひな祭り

まで外で干し、室内で保管します。

 グラスファイバーやカーボン素材の竿は折れてしまったら買い換えですが、和竿なら折れた部分だけ別の竹でつくればまた使えます。また ○ mでこういう竿が欲しい とオーダーメイドできるのが和竿の利点です。

 日本最古の釣り専門書 何羨録が書かれて約300年。当時とは地形も海岸線の様子も異なりますが、竹の竿を手に水面を見つめる行為はきっと同じです。和竿体験で 時空を超えて、江戸時代の人々と釣りの楽しさを共有できるわけです。-ミッカン 水文化よりー