JR西日本の列車に「貴生川行」というのがあったので いつか乗ってみたいと思っていた。ある晴れた日
その思いを決行に移した。列車は貴生川に近づくと、川沿いの土手に桜の花と竹林が見えてきた。
駅で降りて土手を目指して長い道を歩いた。遅い春のせいか 土手にはまだ土筆が生えていた
土手の桜道では走っている人たちもいて 気持ちのいい気候はランニング日和のようだった。午後2時を回り 帰ろうとすると、小さな動物が日が落ちてきて木陰になった道に現れた こっちに気が付いているはずなのになぜかすぐに逃げない。
ふさふさした尻尾から イタチではないことが分かった。イタチならすぐに逃げる。狐だ。忍者の里
甲賀市の真昼の出来事である。 狐は竹やぶにと飛び込む前に ちゃんとそのプレゼンスを見せつけたのだ。
桜が咲いているじかんはほんの一瞬のように短いので、さくらと竹がふんだんにある唯一の国である日本。を日々忘れがちである。竹はプラスチックに押されて
いにしえの時代に比べ その存在感は薄いが ピンク色に咲き誇るバラ科の植物である桜が、町や山を美しく染めている時 となりに竹林がある。竹を思い出すと最強の国だということが分かる。まちが桜色に煙っている時 竹はしなやかに、すくっと青空に向かって伸びている。こんな国二度とない。