竹が磨く技術力

トヨタ自動車のハンドルを製造するミロクテクノウッド(高知県南国市篠原)の新しい木製ハンドルが、トヨタの高級車「クラウン」の特別仕様車に搭載され、注目を集めている。染色した薄い木材を22枚重ね合わせ、機械で曲げて加工。猟銃生産などで培った「匠(たくみ)の技」を凝縮しており、ミロクテクノウッドの片山弘紀社長は「他社では絶対作れないハンドル」と強調している。

 特別仕様車はトヨタの販売店創立70周年を記念し、8月29日に発売された。ミロクテクノウッドのハンドルを、クラウンの「アスリート」と「マジェスタ」で採用。特別仕様車の目玉として打ち出している。(高知新聞 2016 9.04付)

短冊状に加工した竹を接着剤で重ね合わせ、円形に曲げてハンドルに仕上げる経済効果 雇用の拡大

竹の切子 10~15名

ラミナ加工(コスモ)10名増加

SW/H ミクロテクノウッド社 30名増加

革巻き(愛知県) 20名増加

毎日山から100本切出す 加工の難しい竹を工業製品に高めた

 一貫体制をとる

高知の竹で自動車ハンドル ミロク子会社、レクサスが採用

2011/12/22付 日本経済新聞

 

 ミロク子会社で自動車部品メーカーのミロクテクノウッド(高知県南国市、田中勝久社長)は、高知産の竹を用いた自動車用ハンドルを開発した。独特の感触があり、デザイン性に優れるのが特徴。生育過程で二酸化炭素(CO2)を大量に吸収する竹を採用し環境面への配慮もアピールする。トヨタが来春発売する次期「レクサスGS」にオプション装備される。

         
          

短冊状に加工した竹を接着剤で重ね合わせ、円形に曲げてハンドルに仕上げる

 ハンドルの主要部材に竹を用いるのは世界初という。高知県工業技術センター、東海理化と共同で開発した。

 弘田竹材店(高知県土佐市)と木材加工のコスモ工房(高知市)が竹の加工を担当し、ミロクテクノウッドがハンドルに仕上げる。ミロクとともにテクノウッドに出資する東海理化を通じてトヨタに納入する。

 竹は高知県南国市の白木谷で3年以上生育した孟宗竹(もうそうちく)。専門の職人が伐採した良質の竹だけを使う。

 ミロクテクノウッドの既存の木製ハンドルに使っている北米産のクルミやカエデは成木になるまで50~60年かかるが、竹は3年程度で十分な太さまで成長するため、調達が容易という利点がある。

 外皮と内皮をそぎ落とし、芯の部分だけを厚さ4ミリの短冊状に加工する。温度や湿度の変化で竹が反り返らないように乾燥処理した後、特殊な接着剤で短冊を重ねあわせ、金型成型機に押し込んで円形に曲げる。

 強度を持たせるために中をくりぬいて金属を挿入。職人の手作業で磨きあげ、つや消し塗装で竹の肌触りを生かす工夫を凝らした。高級車ブランドの「レクサス」にふさわしい上質感を出す。

 1本の竹から3~4本のハンドルを製造する。竹の加工に手間はかかるが、素材は安く調達できるため製造コストはクルミやカエデ製のハンドルとほぼ同程度に抑えた。

 ミロクテクノウッドは環境にやさしい素材としての竹に注目し、県工技センターと共同で2006年に竹の集成材を活用した自動車内装材の開発に着手。07~08年度には四国経済産業局の地域資源活用型研究開発事業の助成を受け、竹集成材用の成型機を独自開発し、製品開発を進めてきた。

 ミロクテクノウッドはミロクの猟銃製造で培った木材加工技術を生かし、トヨタ車向け木製ハンドルを製造している。11年10月期の売上高は、東日本大震災の影響で生産が一時停止し、前期比28%減の約24億円だった。

 

地域連携と伝統技術から産まれた竹ハンドル

 竹は古来より食材、扇子や定規などの
道具として日本人の生活には欠かせない
存在でした。高知県は竹林面積が4 , 3 8
8haと日本有数の竹林保有県で古くから
竹産業が盛んでした。
 しかし、高度経済成長期以降、輸入筍やプ
ラスチック製品の普及に伴い国産竹の需要
は減り続け、放置される竹林が増えました。
竹は「破竹の勢い」と例えられるように成長
が早く、約3年で成長します。手入れを怠る
と周囲の森林に侵入し、植生を破壊するた
め「竹害」として日本全国で問題になってい
ます。このような状況から、竹害防止と技術
継承のため竹材の工業製品化を模索してい
た高知県工業技術センターと、竹の独特な
風合いと環境特性に着目した当社と(株)ミ
ロクテクノウッド、および(株)コスモ工房に
よる竹ハンドル開発がスタートしました。

植物材料はプラスチックや金属といった

他材料とは異なり、一本一本材質・質量・
強度が異なる上、なおかつ、竹はイネ科に
属する草本で、工業材料として使用するた
めに必要な物性などの基礎技術がほぼ何
もない状態でした。自動車用ハンドルには
耐荷重性・耐熱性・耐湿性など非常に厳し
い管理が求められます。
 高知県工業技術センターと木材加工の
技術を保有していた( 株)ミロクテクノ
ウッド、および(株)コスモ工房は共同で材
料物性評価と前処理および加工技術の
開発に着手しました。竹は古くから良質
な竹の産地とされていた高知県南国市
の白木谷の孟宗竹に絞り込み、ラミナと
呼ばれる板材に加工後、熱と蒸気を利用
した前処理によって含水率を調整し、物
性を安定させる技術を開発しました。
 さらに、竹をハンドル形状にするためラ
ミナを重ね合わせ、半月状に曲げ成形しな
がら接着、これを切削加工する工法を開
発しました。
 その後、当社が中心となりハンドルと
しての強度要件を満足させる設計や試作
品評価を行いました。こうして竹の削り
出しハンドルとして世界で初めて、自動車
内装部品としての種々の品質基準をクリ
 竹ハンドルは「GS450h」に採用されて以
来、ES、LS、HS、RXにも順次採用されまし
た。年間1万本の竹ハンドルを生産するため
には、約100㎥の原竹が必要となります。一
方、高知県工業技術センターの試算による
と、高知県内には96,000㎥もの伐採可能
な竹林があり、しかも竹の生育は3年と非常
に早いため供給による竹林面積の減少はあ
りません。竹産業の衰退により、放置されて
里山を侵食していた竹は、ハンドル原料とし
て再び地域に恩恵をもたらしています。
 また、景気後退により生産量が減少して
いましたが竹ハンドル製造開始により、か
つてない生産量になり材料確保や加工に
係る高知県内の各企業は従業員の増員を
行っており、地域雇用の創出にも貢献して
います。